メトロポリタン美術館展@国立新美術館 2022/5/5
試験と仕事がとりあえずGWで一段落し、有給消化のため長い休みとなりました。とはいえ、中々コロナ禍の状況で旅行にも行けないのでせめてと思い、久しぶりに美術館に行くことにしました。(一応大学で学芸員資格過程の単位も取ってましたので博物館や美術館には興味がありました。しかしここ数年はご無沙汰だったな…)
今までは好きな展示っぽい美術館に特に勉強もせず、飛び込みで行って「わーすごーい」で終わっていたのですが、成長すると「予習もしないで行くのはどうなんだろう?」と思うようになり、今回はある程度公式サイトや大学時代に使っていた西洋美術の教科書、今You tubeで学び直し中の世界史の資料集を使ってノートを取る形で展覧会の前準備をしていました。ほんと聖書やギリシャ神話、象徴(アトリビュート)を知ってると漫然と見るより考えながら見れて楽しそうだなと思っていました。あとノートにまとめるのが昔から好きだったので、どんどん乗ってきたり。
とりあえず、公式HPの作品リストをダウンロードしてタイトルと年代を手書きし、資料や公式HPで公開されている内容をちまちまと追記…というアナログな形です。
そんな月日を経て当日。昔は紙のチケットを買って~という形式でしたが、今はコロナ禍の影響もあり事前予約制&電子チケット制に。午前中の方が頭もスッキリした状態で見やすそうだなと思い、予約したのですが入場時刻ギリギリになってしまい速足で駅から美術館にいくことになったのでそこは反省ポイントだったなーと。(ただ、公式サイトでは混雑を防ぐため分散入場を推奨していたのである意味良かったかも)
入口にはこんな形で絵がお出迎え。
僭越ながらメトロポリタン美術館のイメージが「みんなのうた」のイメージしかなかったので、改めて調べるとなるほどなーってなりました。今回は西洋美術を展示している常設展のスペースで自然光鑑賞できるようにという改装を行うため、他の美術館への貸し出しが決定したそうで。日本初上陸の絵もかなりあるとのことでした。
展覧会自体は大まかに500年を3つの章に分けて展示されていました。
以下、続きから3つの章で好きだった絵画を抽出しながら感想を述べていきたいと思います。
- 信仰とルネサンス(Devotion and Renaissance)
主に15世紀からの作品が中心ですね。昔西洋美術史で履修したフラ・アンジェリコやラファエロ、エル・グレコ、ティツィアーノ等々有名画家のオンパレードといった形でした。鑑賞していて、気になったのは特にこの2つ。
キリストの磔刑という王道の一場面。背景が金というのもなんとも宗教画っぽいなというのが第一印象でした。十字架を取り囲む人々の奥行きの表現なども新鮮だったのですが、個人的にはどことなくキリスト(中央)と失神する母マリア(左下)の肌の色が何となく緑っぽく塗られているのが気になりまして…(他の登場人物は結構肌色が多い)死者というかゾンビっぽいなとか思ってしまったり。
ドッソ・ドッシ 「人間の三世代」(1515頃)
お初にお目にかかったこのドッシの絵なのですが、三世代の構図が凄く好きでした。三世代ということで奥から老夫婦、真ん中に若夫婦、そしてそれをひょっこりとのぞく子供たちというどことなくかわいらしい絵だなあと。ただ、何となくこの時代の絵にしては登場人物の表情が意図的にぼやかされているのが気になったり。意味があるのかもしれないですね。
2.絶対主義と啓蒙主義の時代(Absolutism and Enlightenment)
絶対王政等の影響を受けて生まれたバロック美術やルイ14世の治世の間に生まれたロココ様式の登場ですね。展覧会的にも最も作品数が多いので、やはり目玉なのだろうなという印象。気に入った絵は大体ここら辺のが多かったです。フェルメールが昔から好きなのでまたお目にかかれてうれしかったです。今回初めて知ったのですがフェルメールの作品でまともに現存しているのって30数点くらいらしいですね。それでも世界的に有名ってすごい。
カラヴァッジョ「音楽家たち」(1597)
チケットやメインビジュアルにもなっていて、今回の展示会の間違いなく目玉と言える作品。殺人等破天荒な生涯を送ったカラヴァッジョの比較的若い頃の作品。最初のパトロンであるデル・モンテ枢機卿の邸宅に招かれていた音楽家の青年たちをモチーフにした絵らしいのですが、色気が半端なかった。公式サイトで見た時はそれほど感じなかったのですが、実物を見たら背を向けて本を読んでいる少年の背中がほんとリアルでゾクッとしました。写真のない時代にこの色気を引き出すとは恐ろしい。好きこそものの上手なれとはまさにこのこと?かもしれません…(カラヴァッジョもデル・モンテ卿もどうやらそっちのひと疑惑があるらしいので…)
フェルメール「信仰の寓意」(1670-72頃)
お気に入りのフェルメールの作品。フェルメールというと著名な「真珠の首飾りの少女」や「レースを編む女」みたいな日常的な風俗画がメインなので、今回のような何か漠然としたイメージを表現した「寓意画」のようなものは実は初めて拝見しました。カトリックによる「信仰」による支配を表してるというこの絵ですが、実際見ると青色の使い方が本当に綺麗で。女性の服の質感もきれいに出ているし、カーテンに織られた柄の青色もとてもきれい。そして何よりガラス玉がつるされた青の紐という細かい場所まで美しい。ポストカードも勿論購入しましたが、あの青はやはり生でみないと堪能できない青色だなあとしみじみしてしまうくらいでした。
ヤン・ステーン 「テラスの陽気な集い」(1670頃)
フェルメールとほぼ同時期に活躍したとされるヤン・ステーンの作品。というか私オランダの風俗画が好きなのかもしれません。絵の解説を読んだら酒や祭りに堕落しきっている人たちを皮肉を交えて(+描いた本人も酒を飲んだ姿で左端に登場)というちょっと風刺画っぽい絵らしいのですが、個人的に右端にいる吟遊詩人の兄さんがどことなくイケメンチックな感じがして凄い惹かれたんですよね。(身も蓋もない)このアングル凄く好みでした。あと、解説にもありましたがこの騒ぎに冷めた目で目をそらしている左下の飼い犬の表情もなんかツボでした。ポストカードあったら欲しかったのですが、なくて残念。
マリー・ドニーズ・ヴィレール
「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)」
(1801)
ブログ書いていて「タイトル長!!」って改めて思いました。18世紀後半のフランスの女性画家マリー・ドニーズ・ヴィレールの作品。(こちらもメインヴィジュアルになっているので目玉の一つでしょうね)絵を描く女性の表情の陰影表現や服の描写も好きなのですが、窓に映ったカップルを描いていたところを写真に撮られた感があるような気がします。このカップルにどんな思いを寄せていたのか個人的にはちょっと気になるところです。(漫画だと思い人に秘めた思いを隠しつつその人を描き続けたという作品が多いので…なんでも恋愛になるのはちょっと個人的にもアレですが)
ジョシュア・レノルズ 「レディ・スミスと子供たち」(1787)
イギリス・ロイヤルアカデミー初代会長のジョシュア・レノルズの作品。イギリスはヨーロッパの絵画の中でも肖像画が突出して発展したようで、その影響が出ているなあと。子供たちの表情がとにかく生き生きしていて可愛い。特に右端の女の子の笑顔が本当にリアルで、見ているこっちもにやにやしてしまうような可愛さ。ピンクのリボンもきっちり決まっています。おしゃまさんって言いたくなりました。
3.革命と人々のための芸術(Revolution and Art for the People)
フランス革命を皮切りとした新古典主義、ロマン主義、自然主義、写実主義、印象派といった怒涛の移り変わりを様々な画家を介して表現しているスペースのような気がしました。本当にこの時代から絵画からにじみ出る画家の個性が本当に幅広くなり、今の絵画に繋がっていくのだなあと感じました。あとは写真の発明もあったせいか、より現実的な目線が加わった印象があります。(印象派による見え方の研究等々)この時代の作品も結構お気に入りがあるのですが、今回は特に脳内に残ったこの2作品を。
オーギュスト・ルノワール 「海辺にて」(1883)
フランス出身の印象派の一人・ルノワールの作品です。実は、個人的にルノワールの作品は好きなものが多いのですが、中々お目にかかる機会が今までなく…十年前パリに旅行に行った際にかの有名なモンマルトルの踊り場を描いた「ムーラン=ド=ラ=ギャレット」が生で見たくてオルセー美術館に行ったくらいだったのです。ただ、中々見つからず、受付の方にたどたどしい英語で"Excuse me, where is this picture?"って言って"Go to Shanghai."と返されたのが凄く印象的でした。(仕方なくポストカードだけ買って帰ったという…)
でそんな個人的な思い出が詰まったルノワールの作品とついにご対面。やはりルノワールの色使いが個人的に好きです。後ろの背景を左程書き込まなくてもきれいな海辺だということが伝わってきますし、女子絵の頬の色も好きです。ミュージアムショップでコースターを購入してしまうくらいにはお気に入りです。
エドガー・ドガ 「踊り子たち ピンクと緑」(1890頃)
ルノワールと同様、フランス印象派として有名なドガの作品です。予習していて知ったのですが、ドガはこの踊り子のモチーフを生涯かなり多用していたようで検索かけるといろんな踊り子の作品が出てきます。(後日鑑賞したスコットランド美術館展でも同傾向の作品の作品があり、比較したら楽しそうだなあと思いました)この頃からすでにドガの視力が衰えていたようなのですが、それでもこの勢いのある絵を完成させるのは凄いなあと思いました。煌びやかな色の踊り子の中に、密かに存在している黒いシルクハットの物陰(どうやらパトロンらしい?)が異質さを感じさせるのも印象的でした。
これ以外にも数々の印象的な作品もありました。久しぶり(多分10年ぶり)くらいの美術館でしたが、とても楽しめました。そして「予習してよかったなあ」と思いながら出てきました。予習せずに敢えて先入観なく感動するのもいいのですが、背景知識を少しでも拾っておくとまた作品を見る目が変わってくるなと思いました。(カラヴァッジョとクールベは調べると色んな逸話が出てきて驚きました)
西洋絵画に久々に触れたいなーと思っていた美術復帰勢としてはとても見やすい展示会でよかったです。(会期は5/30までとあと少しですが)当日券は人気ですぐ終わってしまう様子なので、個人的には事前予約をお勧めします。
(最新は電子チケットが主流になって、紙のチケット残らないの寂しいなと思っていたので電子チケットで入場後、このチケットを渡されたのが密かに嬉しかったです)